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Rapid Development
準備

IT担当者がいないとき、まずやるべき三つのこと

開発会社を探す前に、社内で整理しておきたい最低限の内容

あたたかいデジタル · Jeensuk Yang · 2026.08.25 · 読了時間 約6分

社内にIT担当者がいなくても、システム開発を始めることはできます。技術仕様は、開発パートナーと一緒に決めていけばよいからです。ただし、何を変えたいのか、誰が使うのか、何を優先するのかについては、まず社内で整理する必要があります。この三つが整理されているだけで、開発会社との相談の質は大きく変わります。

解決したい課題・利用者・優先順位の3枚のカードを前に話し合う人たち
準備するのは三つです。解決したい課題、使う人、そして優先順位。

最初に開発会社を探すと、なぜ難しくなるのか

繰り返し行っている手作業を減らすために、新しいシステムを作ることになったとします。インターネットで開発会社を3社探し、それぞれに問い合わせました。

ところが、会社ごとに質問される内容が違います。ある会社からは希望する機能一覧を求められ、別の会社からは現在使用しているシステムを聞かれます。さらに別の会社からは、最初に予算を尋ねられます。

質問に答えているうちに、各社へ少しずつ違う説明をすることになります。

その結果、届いた見積金額や開発期間には大きな差が生まれます。しかし、どのような基準で比較すればよいのか分かりません。

それぞれ違う基準で異なる提案を出す3社の開発会社と、比較の基準が分からない担当者
会社ごとに聞くことも提案も異なります。基準がなければ比較できません。

このような状況になると、「自分たちにITの知識がないからだ」と考えがちです。しかし、本当の原因は知識不足ではありません。原因は、準備する順番にあります。解決したい課題、利用者、優先順位が整理されていない状態で、開発方法や見積金額から質問してしまったことが原因です。

必要な情報がなければ、開発会社は空欄になっている部分を、それぞれの考え方で補うしかありません。そのため、各社から異なる提案や見積もりが返ってきます。

準備をすれば、すべてが正確になるわけではありません。それでも、事前に整理するほど、見積金額とスケジュールの不確実性を小さくできます。そのために最低限必要なのが、次の三つです。

1. 作りたい機能より、解決したい課題を整理する

最初から詳細な機能一覧を作る必要はありません。それは、開発パートナーと一緒に考える部分です。まずは、次の五つの質問に答えてみてください。

  • 現在、どの業務で問題が起きているか
  • 誰が最も大きな不便を感じているか
  • 現在、その業務をどのような方法で処理しているか
  • どのくらい時間がかかり、どの程度ミスが発生しているか
  • システムを導入した後、何が変わってほしいか
手帳や名刺で情報が散らばっていた状態と、一つの画面で顧客情報を共有できる状態の対比
現在の不便と、その先に実現したい姿。この二つを説明できれば、半分は伝わります。

同じ依頼でも、これらの答えがあるかどうかで伝わり方が大きく変わります。

内容が伝わりにくい依頼 顧客管理システムを作ってください。
内容が伝わる依頼 営業担当者がそれぞれ別々に顧客情報を管理しているため、担当者が変わると過去の商談履歴を確認できません。顧客情報と商談履歴を一か所で確認できるようにしたいです。

後者の文章には、技術用語が一つも使われていません。それでも開発会社は、この文章だけで何を作る必要があるのかを半分ほど理解できます。大切なのは正確な技術用語ではなく、現在の不便と、実現したい変化を具体的に説明することです。

2. 利用者と、最も重要な業務の流れを整理する

システムは、単に機能を集めたものではありません。人が仕事を進める順番を変えるための道具です。そのため、次に整理したいのは、誰が、どのような順番で仕事をするのかです。

  • 誰がそのシステムを使うのか
  • 業務はどのような順番で進むのか
  • 何をきっかけに、その業務が始まるのか
  • 業務の最後に何が残る必要があるのか
  • 承認、通知、修正、キャンセルの手順が必要か
  • 管理者と一般利用者で、閲覧できる範囲が異なるか

この段階で画面を描く必要はありません。次のような文章で十分です。

  1. 営業担当者が新しい顧客を登録します。
  2. 管理者が担当者を割り当てます。
  3. 担当者が商談内容を記録します。
  4. 契約の可能性が高くなった場合、チーム責任者へ通知します。
顧客登録 → 担当者の割り当て → 商談の記録 → 責任者への通知と続く4段階の業務フロー
画面を描く前に、仕事が進む順番を4行で書いてみてください。

わずか4行ですが、この中には3種類の利用者、権限の違い、通知の条件が含まれています。複雑な画面設計を作る前に、業務がどのような順番で進むのかを整理することが大切です。

3. 予算・スケジュール・優先順位・意思決定者を決める

開発する範囲は、予算とスケジュールによって変わります。そのため、三つ目に整理するのは、今回のプロジェクトで現実的に実行できる条件です。

  • 使用できる予算の範囲
  • 必ず完成させなければならない時期と、その理由
  • 最初のバージョンに必ず必要な機能
  • 後から追加してもよい機能
  • プロジェクト責任者
  • 最終承認者
  • 資料や意見を開発会社へ伝える窓口担当者

予算は伝えたほうがよい

予算を伝えると、開発会社から高い金額を提示されるのではないかと心配し、予算を伏せるケースがあります。しかし、予算が分からなければ、開発会社には開発範囲を決める基準がありません。そのため、必要な機能を広めに想定するか、反対に最小限だけを想定することになります。結果として、各社の見積もりを比較しにくくなります。

正確な金額ではなく、予算の範囲だけでも構いません。「この予算内で何ができるのかを知りたい」と伝えるだけで十分です。

機能を三つに分ける

区分判断基準
必ず必要この機能がなければ、利用を開始できない
あると便利便利ではあるが、最初のバージョンになくても開始できる
後から検討実際に使った後で、必要かどうかを判断する
必要なものだけを載せた小さな船を先に出し、残りの機能は棚に置いたままの様子
最初のバージョンは機能が足りない製品ではなく、次を決めるための小さなスタートです。

最初のバージョンは、すべての機能がそろった完成品ではありません。実際に使いながら、方向性が正しいかを確認するための小さなスタートです。一度にすべての機能を作るより、最後まで完成できる小さな範囲を先に決めるほうが安全です。残りの機能は、実際に使ってから決めても遅くありません。

どのような方法で開発するかは、まだ決めなくても構いません。既製品を導入したほうがよい場合もあれば、ノーコードツールで十分な場合もあります。また、新しく開発する必要がある場合もあります。

開発方法は、課題と条件を確認した後で決めるものです。先に開発方法を決め、それに合わせて課題を考えると、多くの場合は費用が増えてしまいます。

開発会社へ渡す最低限の資料

これまでの三つの内容を1枚にまとめれば、そのまま相談資料として使えます。完成された要件定義書である必要はありません。文書、スライド、表など、形式も自由です。

項目記載する内容
背景なぜ今、このプロジェクトを始めたいのか
課題どのような不便を解決したいのか
利用者主に誰が使うのか。利用者は何人いるのか
現在の方法現在、その業務をどのように処理しているのか
理想の業務フロー導入後、どのような順番で仕事を進めたいのか
必須機能今回、必ず必要なものは何か
参考事例似ていると感じたサービスや画面
希望スケジュールいつまでに必要なのか。なぜ、その時期なのか
予算範囲今回のプロジェクトに使用できる予算
担当者開発会社との窓口担当者と最終承認者
既存システム連携する必要がある既存のシステムやサービス
個人情報・セキュリティ扱う情報と、守らなければならない条件

この表で特に空欄になりやすいのが、既存システムと個人情報・セキュリティです。そして、後からスケジュールや費用を大きく変える原因になりやすいのも、この二つです。現在使用しているシステムからデータを移す必要があるのか、顧客の個人情報を扱うのかだけでも、事前に記載しておくと役立ちます。

良い開発パートナーは何を質問するのか

この資料は、開発会社を選ぶ際の判断基準としても使えます。最初の相談で、相手が何を質問するのかを確認してください。

  • なぜ今、そのシステムが必要なのか
  • 実際に使う人は誰なのか
  • 現在は、その業務をどのように処理しているのか
  • 最初のバージョンで何を検証したいのか
  • 社内の意思決定者は誰なのか
  • 公開後の運用や修正は誰が担当するのか
  • 個人情報やセキュリティについて、守るべき条件は何か
目的・利用者・検証・セキュリティをホワイトボードに書きながら先に質問する開発パートナー
機能や金額より先に目的と業務を尋ねる会社のほうが、その後の範囲を一緒に調整しやすくなります。

機能や金額を素早く提示すること自体が、悪いわけではありません。ただし、事業の目的と実際の業務を先に理解しようとする会社のほうが、その後の開発範囲を一緒に調整しやすい傾向があります。

見積金額が会社によって大きく異なる理由については、関連記事開発の見積もりが会社によって2〜3倍も違う理由で詳しく解説しています。

相談前のチェックリスト

開発会社へ連絡する前に、次の10項目を確認してみてください。すべての項目を埋められなくても構いません。回答できる項目が多いほど、相談時間が短くなり、各社から届く提案も比較しやすくなります。

  • 解決したい課題を一文か二文で説明できる
  • 最も大きな不便を感じている人が誰か分かっている
  • 現在、その業務をどのように処理しているか説明できる
  • システム導入後の業務の流れを4〜5行で書いている
  • 必須機能と、後から追加できる機能を分けている
  • 今回使用できる予算の範囲が決まっている
  • いつまでに必要なのか、その理由を説明できる
  • 社内の責任者と最終承認者が決まっている
  • 既存のシステムとの連携が必要か確認している
  • 扱う個人情報とセキュリティ上の条件を記載している

よくあるご質問

Q. IT担当者がいなくても、システム開発を依頼できますか?

はい、可能です。技術仕様は、開発パートナーと一緒に決める部分です。社内で整理していただきたいのは、解決したい課題、利用者、優先順位の三つです。これらは、実際の業務を知っている方が最もよく分かっている内容です。

Q. 開発会社へ問い合わせる前に、何を準備すればよいですか?

この記事でご紹介した1枚の資料があれば十分です。背景、課題、利用者、現在の方法、理想の業務フロー、必須機能、スケジュール、予算範囲、担当者を記載してください。資料の形式は自由です。

Q. 開発予算は事前に決める必要がありますか?

正確な金額でなくても構いませんが、予算の範囲は決めておくことをおすすめします。予算が分からなければ、開発会社は開発範囲を決められません。その結果、条件の異なる見積もりが届き、比較しにくくなります。予算の範囲を伝えれば、その範囲内で実現できる方法を提案してもらえます。

Q. 要件定義書がなくても相談できますか?

はい、相談できます。要件定義書は、相談を重ねながら一緒に作っていく資料に近いものです。ただし、課題、利用者、優先順位が整理されていると、最初の相談から、より具体的な話ができるようになります。詳しくは、関連記事要件が決まらないまま開発を始めると、何が起きるのかでご紹介しています。

Q. 良い開発会社は、どのような質問をしますか?

機能や金額より先に、開発の目的と実際の業務について質問します。なぜ必要なのか、誰が使うのか、現在はどのように処理しているのか、最初のバージョンで何を確認したいのかを質問する会社であれば、その後の開発範囲も調整しやすくなります。

完璧な企画書より、明確な課題設定を

社内にIT担当者がいなくても、プロジェクトを始めることはできます。技術仕様は、開発パートナーと一緒に具体化していけば問題ありません。ただし、解決したい課題と優先順位については、社内で決める必要があります。この部分を、社外の会社が代わりに決めることはできません。

そして、最初は小さく始めてください。小さな最初のバージョンは、機能が不足した製品ではありません。次の判断を行うための材料です。実際に使ってから次の機能を決めることで、大きな手戻りを減らせます。

何を作ればよいのか、
まだ明確に決まっていなくても構いません。

まずは、現在の業務と解決したい課題についてお聞かせください。
最初のバージョンに必要な範囲を、一緒に整理します。

ご相談は60分無料で、事前にご用意いただく資料もありません。こちらから営業電話をかけることもありません。

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Jeensuk Yang · あたたかいデジタル代表
中小企業の皆さまが「何を作るか」を考える前に、「何を作らないか」を決められるよう支援しています。迅速開発では、最短30日で実際にお使いいただける初期版を公開し、利用結果を確認しながら改善していく方法を採用しています。

※ 本文中の顧客管理および営業担当者の事例は、複数のご相談でよく見られる内容をもとに構成した例です。特定のお客さまやプロジェクトを紹介したものではありません。
※ この記事の判断基準は、あたたかいデジタルにおける相談経験に基づくものです。業界の統計や調査結果ではありません。開発期間と費用は、開発範囲、外部連携、セキュリティ、検収条件などによって異なるため、一般的な数値は掲載していません。