受注業務を効率化するにはどうしたらいいですか?
受注業務の効率化は、ツール選びではなく「どこで手が止まっているか」の特定から始まります。打ち手は四つ。それぞれが向いている会社と限界を、卸売業の現場に即して整理しました。
まず答えると
受注業務の効率化は、「どのツールを入れるか」から始めると、たいてい失敗します。先にやることは一つ、自社の受注業務のどこで手が止まっているのかを特定することです。重いのは注文が届くこと自体ではなく、届いた注文を人が読み取り、販売管理システムに入力し直す工程だからです。そのうえで打ち手は四つ——①人を増やす・外注する ②取引先に発注方法を変えてもらう ③注文書をAI-OCRでデータにする ④受け方は変えずに社内の入力だけをなくす。どれが合うかは、注文がどの経路で何割届いているかで決まります。
こんな方のための記事です
- 毎朝、届いた注文の入力に時間を取られている卸売業の受注担当者
- 受注担当を増やすべきか、仕組みを入れるべきか迷っている経営者
- 受発注システムの比較記事を読んだが、自社に合うか判断できない方
- 取引先に発注方法の変更をお願いしづらいと感じている方
この記事でわかること
- 受注業務のどこで時間が消えているのか(四つの工程)
- 効率化の打ち手は四つしかないこと
- それぞれが向いている会社と、必ずある限界
- 自社に合う打ち手を決める四つの質問
- 導入前に避けたいよくある失敗
日和あかり · 記事のご案内
こんにちは、日和あかりです。「朝の受注、なんとかならないかな」——そう思ったことがあるなら、この記事はその続きです。むずかしい言葉は使わずに、どこで手が止まっているのかを一緒に見ていきましょう。
質問 01
受注業務の効率化は、何から始めればいいですか?
ツール選びではなく、工程の実測から始めてください。誰が、どの工程に、一日何時間使っているかを一週間書き出す。この一枚が、どの打ち手を選ぶかを決めます。
受注業務が重いのは、注文が届くこと自体ではありません。重いのは、届いた注文を人が読み取り、販売管理システムに入力し直す工程です。ここを見ずにツールを比べると、いちばん時間を使っている工程が手つかずのまま残ります。
比較記事やランキングから入ると、自社の工程ではなく製品の機能で判断することになります。順番が逆です。まず自社を測り、それから打ち手を選びます。
小さな実行
今週、受注担当の方に一つだけ聞いてみてください。「朝、いちばん時間がかかっているのは何ですか」。感覚ではなく、一週間の実測が理想です。
質問 02
受注業務では、どこで時間が消えているのですか?
四つの工程に集中しています。①読み取る ②入力する ③確認する ④例外を処理する。そして、そのすべてが朝に集まります。
① 読み取る(解釈する) LINEのメッセージ、メールの本文、FAXの手書き、電話のメモ。書式が決まっていない文章から、商品と数量と納期を読み取ります。「いつもの」「3箱」が何を指すのかを、担当者の頭の中にある情報で補いながら判断しています。
② 入力する(打ち直す) 読み取った内容を、販売管理システムに手で入力します。同じ情報を、届いた形から社内の形へ「移し替える」だけの作業です。ここが最も時間を使い、最もミスが出ます。
③ 確認する・問い合わせる 読み取れなかったもの、在庫が足りないもの、納期が合わないものを、電話やメッセージで確認します。相手の返事を待つ間、その注文は止まります。
④ 例外を処理する 急な追加、キャンセル、数量変更、締め時間を過ぎた注文。イレギュラーは必ず発生し、そのたびに①〜③をやり直します。
そして、これらが朝に集中します。前日の夜から当日の朝までに届いた注文を、出荷までに処理しなければならないためです。「朝はこの作業で他に何もできない」という状態は、工程の問題であると同時に、時間の集中の問題でもあります。
| 工程 | やっていること | ここが重くなる理由 |
|---|---|---|
| ①読み取る | 自由な文章から商品・数量・納期を解釈する | 担当者の経験に依存する。書き方が取引先ごとに違う |
| ②入力する | 販売管理システムに手で打ち直す | 件数にそのまま比例する。ミスが出るのもここ |
| ③確認する | 不明点・在庫・納期を電話やメッセージで確認する | 相手の返事を待つ間、その注文が止まる |
| ④例外 | 追加・キャンセル・締め後の注文に対応する | 発生するたびに①〜③をやり直す |

日和あかり · 読者の気持ちを代弁
「うちが特別に忙しいだけでは」とおっしゃる方が多いのですが、工程に分けてみると、どの会社もだいたい同じ四つに時間を使っています。忙しさの問題ではなく、工程の形の問題なんです。
小さな実行
四つの工程を紙に書き、それぞれの横に「一日何分か」を書き込んでみてください。空欄が多いほど、まだ測れていない部分が大きいということです。
質問 03
効率化の打ち手には、どんな選択肢がありますか?
大きく四つです。人を増やす・外注する/取引先に発注方法を変えてもらう/注文書をAI-OCRでデータにする/受け方は変えずに社内の入力だけをなくす。どれにも向いている会社と限界があります。
打ち手① 人を増やす・外注する
受注担当を増員する、または受注入力を外部に委託します。向いている会社は、繁忙期だけ量が跳ね上がる会社、注文の形が複雑で当面は人の判断が必要な会社です。限界は、工程そのものが変わらないこと。取引先が増えれば人も増やし続けることになります。①の「読み取る」は経験に依存するため、新しい方がすぐ同じ速度で処理できるとは限りません。担当者が辞めたときに業務が止まるリスクも残ります。
打ち手② 取引先に発注方法を変えてもらう
Web受発注システムやEDIを導入し、取引先にその画面から発注してもらいます。データが最初から構造化されるため、②の入力工程は原理的になくなります。向いている会社は、取引先の数が限られていて関係が深く、こちらの依頼に応じてもらえる会社です。
限界は、取引先に「変えてください」とお願いできるかどうかがすべてを決めることです。飲食店や小売店の現場では、深夜や早朝に、慣れたLINEや電話で発注しているケースが少なくありません。そこに新しい画面を覚えてもらう依頼は、こちらが思うより重い依頼です。導入したものの一部の取引先しか使ってくれず、結局「システム経由」と「これまでどおり」の二重管理になる、という失敗はよく起こります。
打ち手③ 届いた注文書をAI-OCRでデータにする
FAXやPDFで届いた注文書をAI-OCRで読み取り、データに変換します。帳票の書式ごとに読み取り設定をつくり、精度を上げていきます。向いている会社は、注文の大半が決まった書式の帳票で届く会社、特定の大口取引先からの注文が量の多くを占める会社です。
限界は、対象が「帳票」であることです。LINEのメッセージ、メールの本文、電話のメモのような書式のない自由な文章は範囲外になります。また帳票の種類ごとに設定が必要なため、注文件数の少ない取引先まで対応するとコストが見合わなくなり、結局その分は手入力のまま残るということが起こります。
打ち手④ 受け方は変えずに、社内の入力だけをなくす
取引先にはこれまでどおりの方法で注文を送ってもらい、届いた内容を読み取ってデータにし、いま使っている販売管理システムに渡します。取引先も、社内の販売管理システムも変えません。変わるのは「人が読んで打ち直す」工程だけです。向いている会社は、取引先に発注方法の変更をお願いしづらい会社、注文が複数の経路に分散している会社、販売管理システムを入れ替える予定がない会社です。
限界は、自由な文章を読み取る以上、確信が持てない項目が必ず出ることです。「いつもの」が何を指すか、「3箱」がどの規格か。ここを機械が勝手に決めてしまうと、誤出荷という、いちばん高くつくミスになります。したがってこの方式では、確信度の低い項目だけを人に確認する仕組みが必ず必要です。
| 打ち手 | 向いている会社 | 必ずある限界 |
|---|---|---|
| ①人を増やす・外注 | 繁忙期だけ量が跳ねる/判断が特に複雑 | 工程は変わらない。件数が増えれば人も増える |
| ②取引先に変えてもらう | 取引先が少数で、関係が深い | 使ってもらえないと二重管理になる |
| ③AI-OCRで帳票をデータ化 | 注文の大半が決まった書式の帳票 | 自由な文章は対象外。小口は手入力が残る |
| ④受け方は変えない | 取引先に頼みづらい/経路が分散している | 確信度の低い項目を人が確認する設計が必要 |

日和あかり · やさしく整理すると
打ち手は四つ。どれが良い悪いではありません。御社に注文がどう届いているかによって、合うものが変わります。ですので次は「自社はどれに当たるか」を見ていきましょう。
質問 04
自社にはどの打ち手が合いますか?
四つの質問に答えると、ほぼ自動的に決まります。順番に意味があるので、この順で確かめてください。
打ち手を決める四つの質問
- Q1. 注文はどの経路で、それぞれ何割届いていますか。 LINE・メール・FAX・電話・Web。構成比が分からないまま選ぶと、いちばん多い経路が対象外のツールを選んでしまいます。
- Q2. 取引先に、発注方法の変更をお願いできますか。 「お願いできる」なら②が選択肢に入ります。「一部しか応じてもらえない」なら、②単独では解決しません。
- Q3. いま入力しているのは誰で、一日何時間ですか。 効果の大きさはこの数字で決まります。担当者に直接聞いてください。
- Q4. 販売管理システムを変える予定はありますか。 変えないなら、既存システムにデータを渡せることが条件になります。
| 自社の状況 | 検討する順番 |
|---|---|
| 注文の大半が決まった書式の帳票(FAX・PDF)で届く | ③ → ④ |
| 注文がLINE・メール・電話など自由な文章で届く | ④ |
| 取引先が少数で、発注方法の変更をお願いできる | ② → ④ |
| 取引先が多く、変更をお願いしづらい | ④ |
| 繁忙期だけ量が跳ねる/注文の判断が特に複雑 | ① と併用 |
| 販売管理システムの入れ替えを予定している | ② と一体で検討 |

日和あかり · 気をつけたいところ
ここでいちばん多い失敗は、Q2(取引先にお願いできるか)を確かめないまま決めてしまうことです。ここだけは、社内の希望ではなく、取引先の実際の返事で判断してください。
質問 05
効率化でよくある失敗は何ですか?
五つあります。いずれも、工程を測る前に決めてしまったことが原因です。
導入前に確かめたい五つ
- ツールから選んでしまう 比較記事から入ると、自社の工程ではなく製品の機能で判断することになります。実測が先です。
- いちばん大きな取引先だけ対応して終わる 件数の多い取引先から手をつけるのは正しい順番ですが、残った小口が手入力のままだと担当者の朝は終わりません。「何割の注文が自動になるか」で評価してください。
- 例外の処理を設計しない 急な変更、締め後の注文、読み取れない項目。例外が起きたときに誰が何をするのかが決まっていない仕組みは、運用開始後に止まります。
- 現場の担当者に相談せずに決める 毎朝その作業をしている方がいちばん詳しく、いちばん多くの例外を知っています。決めてから伝えるのではなく、決める前に聞いてください。
- 「取引先も変わってくれるはず」と考える 取引先にとって、発注方法の変更にメリットはほとんどありません。変えてもらえなくても回る形から考えてください。
小さな実行
五つのうち、自社が今いちばん近いものに丸をつけてください。丸がついた一つを、次の社内の打ち合わせの議題にします。
質問 06
「受け方は変えない」とは、どういう考え方ですか?
取引先には何も変えてもらわず、社内で打ち直している工程だけをなくす、という考え方です。私たちがつくっているSNSOrderSystemは、この四番目の立場に立っています。
この考え方の出発点は、「取引先は変わってくれない」という前提を、悲観ではなく設計条件として受け入れることです。取引先にとって発注方法の変更は、メリットの薄い手間です。ならば、変えてもらわなくても社内の入力がなくなる形から考える。それが四番目の打ち手です。
私たちがよく見る場面
朝、担当の方がスマートフォンとFAXと電話メモを並べて、販売管理システムの入力画面に一件ずつ打ち込んでいます。「いつもの」と書かれた注文を、前回の履歴を思い出しながら商品コードに置き換える。読み取れない一件は電話で確認し、返事を待つ間に次の注文が届く。10時を過ぎてようやく一息つく——という朝です。
※ 特定の企業の事例ではなく、卸売の現場で実際に発生し得る状況として構成したものです。
この場面で変えるのは、担当の方が「読んで打ち直す」ところだけです。取引先の送り方も、いま使っている販売管理システムも、そのままにします。
今の注文の受け方は変えない。LINEでも、メールでも、FAXでも——社内の転記だけをなくします。
ただし、この考え方にも限界があります。自由な文章を読み取る以上、確信が持てない項目は必ず残ります。「全部自動で終わります」と説明された場合は、例外をどう扱うのかを必ず確認してください。私たちも、確信度の低い項目は人に確認していただく前提で設計しています。
なお、どの受注経路にどこまで対応できるか、どの販売管理システムと連携できるかは、会社ごとの状況によって変わります。一般論ではなく、自社の条件で確認してください。
もう少し深く質問してみると
「受注業務をどう効率化するか」より先に、「この読み替えの知識は、誰の頭の中にありますか?」
属人化の正体は、担当者の頭の中にしかない読み替えの知識です。「いつもの」が何か、この取引先の「3箱」がどの規格か。入力を自動化することより、この知識を記録に残せる形になっているかどうかが、担当者が変わっても止まらない業務をつくります。効率化の道具を選ぶときも、この一点で見比べてみてください。
日和あかり · まとめと、次の一歩
いきなり大きく変える必要はありません。今日できることは一つだけ——担当の方に「朝、何にいちばん時間がかかりますか」と聞いてみることです。その答えが、御社に合う打ち手を教えてくれます。
よくある質問
Q. 受注業務の効率化は、何から始めればいいですか。
ツール選びではなく、工程の実測からです。「読み取る」「入力する」「確認する」「例外を処理する」の四つに、誰が何時間使っているかを一週間書き出してください。この一枚が、どの打ち手を選ぶかを決めます。
Q. FAXでの受注業務を効率化するにはどうしたらいいですか。
FAXが注文の大半を占めるなら、AI-OCRで帳票をデータ化する方法(打ち手③)が有力です。ただし帳票の書式ごとに設定が必要になるため、注文件数の少ない取引先まで対応できるかを先に確認してください。FAXと同時にLINEやメールでも注文が届いているなら、経路をまとめて扱える方法(打ち手④)のほうが、残る手入力は少なくなります。
Q. 取引先が新しい発注システムを使ってくれません。
よくあることで、取引先の側に落ち度はありません。発注方法の変更は、取引先にとってメリットの薄い手間だからです。使ってもらう工夫を重ねるより、変えてもらわなくても社内の入力がなくなる形(打ち手④)に切り替えるほうが、結果的に早い場合があります。
Q. AIですべて自動になりますか。
なりません。自由な文章から注文を読み取る以上、確信の持てない項目は必ず残ります。そこを機械が勝手に判断すると誤出荷になります。重要なのは「全部自動か」ではなく、確信度の低い項目だけを人が確認する形になっているかです。
Q. 販売管理システムを入れ替える必要がありますか。
打ち手④では、入れ替えないことが前提です。いま使っているシステムにデータを渡せるかどうかが条件になります。連携の可否は製品と自社の環境によって変わるため、個別に確認してください。
Q. 受注業務の属人化はどうすれば解消できますか。
属人化の正体は、その人の頭の中にしかない読み替えの知識です。「いつもの」が何か、この取引先の「3箱」がどの規格か。これを人からシステム側に移していくと、担当者が変わっても止まらなくなります。入力の自動化そのものより、読み替えの知識を記録に残す設計になっているかを見てください。
この記事の要点
- 効率化はツール選びではなく、どこで手が止まっているかの特定から始まる。
- 時間は四つの工程(読み取る・入力する・確認する・例外)に集中し、そのすべてが朝に集まる。
- 打ち手は四つ。どれにも向いている会社と、必ずある限界がある。
- 選び方は四つの質問で決まる。とくに「取引先に変更をお願いできるか」が分かれ目になる。
- 自由な文章を扱う限り、確信度の低い項目を人が確認する仕組みは必ず要る。
次の質問
取引先が発注方法を変えてくれないとき、何ができますか?
取引先「いつもの」という注文は、どうやってデータにするのですか?
読み取りいま使っている販売管理システムは、そのまま使えますか?
連携受注担当が辞めても止まらない業務は、どうつくりますか?
属人化小さな実行を一つ
自社の受注業務がどの状態にあるかを、一度いっしょに整理してみませんか。
いまの注文がどの経路で届いているか、どこで手が止まっているかをお聞きします。その場で何かを決めていただく必要はありません。
自社の受注業務を話してみる最終更新 2026年9月7日
