00 ・ 通知
2026年9月17日、
一通のメール。
その朝に届いたメールの件名は、ふつうでした。開いてみると、2027年2月1日から基本出店料が改定される、というお知らせでした。
まずしたことは、たぶん電卓を開くことだったと思います。うちのプランがいくらからいくらになるのか。年間でいくら増えるのか。その数字を売上で割ると何%になるのか。
そして計算が終わったとき、どこか釈然としなかったはずです。数字は出たのに、答えが出なかったからです。
いちばん上に引いた最初の言葉で大事なのは、値上げ額ではありません。「利益率1%を削り出して」のほうです。その1%は、何か月分もの残業です。商品ページを何度も直し、仕入先と何度も交渉し、梱包材を何度も変えた。そうやってつくった1%が、通知の一行で消えます。
01 ・ 費用
「手数料が高い」という言い方は、
じつは正確ではありません。
出店者に楽天の費用を聞いても、料率表を読み上げる人はいません。代わりに、こう言います。年商1億円規模の楽天店舗をたたんだ、アパレル製造3代目の社長はこう書いています。
楽天市場に支払うのは広告コスト等も合わせて25〜30%くらい。1億円の売上で考えた場合、2500〜3000万の費用が掛かる
楽天市場の運営に関わるコストは人件費も入れると売上に対して5割くらいになっています
アパレル製造 3代目年商1億円 ・ 楽天撤退出典 [1]
売上の半分です。料率表に、そんな数字はありません。料率表にあるのはシステム利用料と決済手数料だけで、そこに広告費が乗り、ポイント原資の負担が乗り、送料が乗り、最後にその全部を回している人の人件費が乗ります。
元・楽天のECコンサルタント(ECC)の証言は、その構造をそのまま見せます。
元 楽天 EC コンサルタント(ECC)出典 [3]
原価6割の店から25%を持っていかれると、残るのは15%です。そこから人件費と家賃が出ていきます。
「手数料が高い」というのは、正確に言えば 「手数料+ポイント原資+広告費+送料+人件費」という束が重い という意味です。
そしてこの束は、料率表の改定とは関係なく、毎年すこしずつ重くなってきました。ここまでは、たぶんもうご存じの話だと思います。
02 ・ 選択肢
だから、たいてい
三つのうちのどれかをします。
① いちばん多い選択我慢する
いちばん理にかなってもいます。売上がそこにあるのですから。「本音は反対だけど、納得もしている」は、6年前の送料無料ライン導入のときにもう言葉になっていました。
限界次の値上げを止められません。2023年に我慢して2026年に我慢すれば、2029年にも我慢します。
② 通知の翌日価格に転嫁する
チャネルごとの価格転嫁。徹底している店は、実際に生き残ります。豆の原価が300%上がったとき、価格を倍にしてもお客さまが離れなかった会社があります。
条件「その店で買う理由」を持ったお客さまが、すでにいること。価格だけで選ばれている店が上げると、検索結果の下に落ちます。
③ いちばん検索される退店する/自社サイト
そして、いちばん実行されません。EC歴17年のある経営者は「自社サイトが最もコストが掛かる」と言い切っています。
現実関心がないのではありません。もう調べたからです。自分でつくってみたか、つくった人の結末を見たか。
③がなぜ検索されるだけで実行されないのか。この局面の検索データが、そのまま見せています。
出たい人は三倍、出方を探す人は半分楽天の出店料値上げ局面における検索需要の増減
脱楽天+200%
楽天 退店+95%
自社EC−20%
ECサイト 構築−62%
■ 出たい気持ちは急増 ・ ■ 出るための手段の検索は落ちた — 出典 [4]
03 ・ 共通点
三つの選択肢に、
共通していること。
我慢する、転嫁する、出ていく。この三つはまるで違って見えますが、共通点がひとつあります。全部、「費用」への答えです。費用を引き受けるのか、人に回すのか、避けるのか。問いが「費用をどうするか」で固定されているかぎり、答えはこの三つから出られません。そしてどれも、来年また通知が来たときの答えにはなりません。
だから、問いのほうを変えます。
この費用を払って、
私は何を買ったのか?
04 ・ 資産
この費用は、
資産になりません。
この問いにいちばん正確に答えている一文は、さきほど引いた社長の文章の中にあります。
売上に比例してかかるただの変動費であって、ほぼ全く資産化しません
アパレル製造 3代目出典 [1]
売上に比例して出ていくただの変動費で、ほとんど資産にならない。同じことを、ドライフルーツ・ナッツを売る別の会社の社長は「流れ」と「積み上がり」で言いました。
売り上げを維持するには広告投資を止めることが難しい。また、検索ロジックなどアンコントローラブル(管理不能)な要素が多く、投資がフローになってしまう
ドライフルーツ・ナッツ販売会社 社長出典 [5]
流れていく
フロー — モールに払うお金
3年後に残るもの03年前と同じ条件
広告を止めれば売上が止まります。検索ロジックが変われば、昨日までの積み上げがリセットされます。3年で3,000万円を使って、3年後に残っているのは3年前と同じ条件です。
積み上がる
ストック — 名簿
3年後に残るもの3年ぶんそのまま残る
一度いただいた連絡先は、来月も同じ場所にあります。使っても減らず、通知が来ても消えません。
これが、値上げの通知を受け取ったときに感じた、あの釈然としなさの正体です。
お金がたくさん出ていくから腹が立つのではありません。それだけ払ったのに、手元に積み上がったものがないから腹が立つのです。
05 ・ 名簿
なぜ積み上がらないのか。
お客さまが、自分のものではないからです。
では、何が積み上がっているはずだったのか。韓国のある健康食品セラーは、こう書いています。
とくに、お客さまのデータや購買履歴がプラットフォームにだけ溜まって、こちらには残らないのも、もどかしく感じます
韓国 ・ 健康食品セラー韓国語からの訳出典 [6]
Amazonのセラーフォーラムには、こんな質問と回答があります。
顧客情報(届け先、メールアドレス等)は一切AMAZONから提供されないのでしょうか?直接顧客にアプローチしたいのですが
Amazonの販売は 自動販売機のようなものだと 割り切る方がいい
Amazon セラーフォーラム質問と、その回答出典 [2]
自動販売機。品物は出ていき、お金は入ってくる。でも、誰が買ったのかは分からない。楽天も変わりません。2010年の時点で、ある出店者がすでにこう答えています ——「カード情報、メールアドレスは取得できません」。リピーターを数えようとしたAmazonセラーの結論は、もっと乾いています ——「FBAの場合、過去の注文からリピーターの数や割合を知ることは不可能のようです」。
モールに払うお金が資産にならない理由は、そのお金で買ったのが「売上」であって「お客さま」ではないからです。
売上はその月で終わります。お客さまは来月もいます。ところが、いまのあなたのお客さまは、来月もいるけれど、あなたのところではなく楽天のところにいます。
楽天が持っているのは、売り場ではありません。名簿です。レビューもランキングもポイントも、囲い込みの本体ではありません。本体は「その人たちに、もう一度声をかけられる権利」で、その権利はいま、あなたの側にありません。値上げされた出店料は、その名簿を人に預けておいた代金の請求書です。
06 ・ 可動域
これが「費用の問題」より
扱いやすい理由。
ここまで読んで、余計に気分が悪くなっていたら申し訳ありません。ただ、この言い換えには、いいところがひとつあります。
費用は、あなたが決められません。名簿は、あなたが決められます。
2027年2月にいくら上がるかは、あなたには決められません。2029年にまた上がるかどうかも決められません。いっぽう「自分がお客さまの連絡先を持っているか」は、まるごとあなたが決めることです。そしてこれには、モールも、自社サイトも、広告費も要りません。
楽天市場に出店していた頃は担当のコンサルタントがびっくりするくらいリピート率が高いと言われていた
撤退してからは予想以上に多くのお客様が買いに来てくれたのです
お茶販売店モール撤退 ・ 自社EC一本化出典 [7]
この事例が成り立った条件は、ひとつだけでした。出ていく前にすでに、お客さまが別の買い場所を知っていたこと。
そしていま日本でいちばん現実的なかたちは、「出ていくこと」ではありません。楽天とAmazonを続けたままLINEに大きく投資して、LINE経由だけで年1億円をつくったコーヒー会社がその例です。モールは新しいお客さまを連れてき続け、二回目は自分の側で受ける。
モールをやめるのではなく、モールの上に自分の根を張ることです。
07 ・ 次の問い
だから、次の問い。
この記事はここで終わります。答えはまだお渡ししていません。次の問いだけを、入れ替えました。
問いが、こう変わります
- 出店料はいくら上がるのか→うちの店の正確な増加額と、三つの日付は何か
- 手数料は何%なのか→売上のいくらが、実際に手元に残るのか
- なぜこんなに忙しいのか→商品力以外の何に、時間を使っているのか
- 自社サイトをつくろうか→つくったら、誰が来るのか
- お客さまに連絡したい→モールの規約が認める接点は、どこまでか
この五つを一つずつほどいた記事が続きます。そしてその先に、自社サイトも決済も持たずに名簿だけを持つ方法があります。
いま、していただくことは何もありません。ただ、ひとつだけ覚えておいていただければ十分です。
売れているのに残らない理由は、あなたが売ったのが商品で、買ったのが売上だったからです。お客さまは、まだ誰も買っていません。
決める前に、知っておく三つの日付「我慢する/転嫁する/出ていく」のどれを選ぶにしても、期限はもう動いています
- 2026年10月1日 〜 2027年1月4日特別解約・プラン変更の受付(1月4日 10:00 まで)
- 2027年2月1日基本出店料の改定
- 2027年6月1日経過措置(差額の70%割引)が終わり、満額の請求がはじまる日
2026年9月17日発表・2027年2月1日改定。2027年1月31日までに開設した店舗は、2月〜5月のあいだ差額の70%が割引されます。出典:楽天発表/日本ネット経済新聞 2026年9月17日
Q楽天をやめる話ですか。
いいえ。続けてください。新しいお客さまを連れてくるのは、これからも楽天です。ユトレルがあずかるのは二回目だけです。
Qモールの規約に触れませんか。
モールの外へのご案内には、モールごとにルールがあります。ユトレルは、そのルールの中でできることだけを組みます。ご相談のときに、いまの店舗で何がどこまでできるかを、原文とあわせて一緒に確認します。
Q決済はどうなりますか。
いまのままです。ユトレルは決済を持ちません。お金は楽天と Qoo10 で受け取ってください。
Q発送や在庫のやり方は変わりますか。
変わりません。いまの倉庫、いまの送り状、いまの会計のままです。書き直すのは、発送完了メールの文面と、箱に入れる一枚だけです。
出典
- [1]〜[7](掲載前にリンクを差し込みます)本文の 25〜30% / 5割 / 41% / 37% / 25% / 原価6割 / +200% / −62% / −20% は、いずれも出店者の声の調査と検索需要調査の記載値です。
あしたから、お客さまの情報が積み上がる器ができます。無料・会員登録なし・楽天はそのまま
業種をえらぶ